『檸檬』梶井基次郎

今日はレモンの日であるらしい。
レモン繋がりで、本は読んだものの書かずにいた梶井基次郎の読感文をば。

さてさて、猫的時事ネタ『檸檬』。
主人公が歩き回る京都の地名に猫は少々なじみがあるので、なんか親しみを覚えました。
一番強い印象は、「色あざやか」。チューブから搾り出した絵具がそのまま固まったようなレモンとか、書架から抜き出して平積みにした画集とか。


作者の特徴なのかな、とも思ったのですが、収録されているほかの作品はそうでもないように感じるので、この作品においては特別に「色」を意識したのかもしれません。
色覚の鋭さを感じたのはこの作品だけでしたが、光・温度・空気・自然などへの鋭さはどの作品にも感じました。
作者は肺を病んでいて、若くして亡くなったそうです。
「自分の死」を見つめざるを得ない状態というのはやはりブンガクに、ゲイジュツに、多大な影響を与えるのでしょか。
考えてみると、「自分の死」を認識できる生き物ってもしかしたら人間だけかもしれないわけで、「自分の死」を見つめるってものすごく人間らしい事なのかもしれない。

表題作以外で印象深かったのは『Kの昇天』。
月の夜に砂浜を歩くと魂が身体からはなれて上へ上へと昇っていく。その感覚を味わいたいと思ってしまうのは猫だけですか?
たとえ残された身体が海中に没して生命活動を停止してしまっても、Kの魂は、Kは、とてつもなく幸せであるに違いないのです。
うらやましい。

チビノワさんがコメント欄でかわいすぎると評されていた仔猫のハナシ、というのが なかったような…?
仔猫が出てきたのは、前足で化粧道具をこしらえるというちょとフシギテイストな1作しかみあたらず。
出版社が違ってたのでしょうか??

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